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終盤にエースを温存。本当に効果的?〜時間帯での怪我のリスク〜

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みなさん、こんにちは!

オランダに移住するまで残すところあと2週間のたなかです!

 

みなさんは、「温存」と言えば何を想像するでしょうか??

近年、コンビニでは肉まん、串焼き、おでんまで様々なものが暖かく温存されるようになりました。

しかし、「温存」するのは、コンビニだけではありません。

 

プロサッカーの世界では、主力選手を「温存」することがあります。

近頃の過密日程を乗り切るためには、次節に出場することを考えて、早い段階で交代することで、

  • 疲労を少なく抑えることができる
  • 怪我のリスクを避けられる

ということはメリットが大きいと思います。

 

温存することで、疲労を抑えることができることはもちろんあると思いますが、

一方で、「怪我のリスクって10分や15分交代したぐらいで変わるの?」と思ったことはないでしょうか。

 

そら、出場時間を短くしたら、その時間分の怪我のリスクはなくなるだろうけど、最後の10分、15分で怪我するって誤差範囲じゃね?っと感じる人もいると思います。

 

なんですが、実は怪我率は時間帯によって変わります。

 

なので、時間帯の怪我率を知ることで、試合の状況と疲労に加えて怪我のリスクも踏まえて比較して、温存する・しないの判断ができれば、

温存のタイミングをさらに正確に、的確に考えることができます。

 

今回は、時間帯によっての怪我率の変動を紹介して、時間帯によって温存することへのメリットがどれくらいあるのかを考えていきたいと思います。

 

時間帯によって怪我率、どんぐらい変わるの?

 

まず、時間帯によって怪我率変わるって本当に変わるのかよ。

という話ですが、こちらのグラフをご覧ください。

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こちらは、2002年の日韓W杯でFIFAが収集したデータをもとに作った、大会中に起きた怪我を時間帯別に分けたグラフです。

 

この怪我には、離脱が必要な怪我から離脱が必要ない軽い打撲まで含まれています。

 

怪我率は前半最初の15分から15分以降にかけて3倍近く上昇していて、

意外にも後半ではなく、前半の15〜45分の時間帯に最も怪我率が高くなっていました。

 

そして、ハーフタイムを挟んだ後半最初の30分間では、前半の終盤の半分程度の怪我率に下がっています。

そしてその後、後半のラスト15分で再度、怪我率が高くなっています。

 

簡単にまとめると、

前後半とも序盤は怪我率が低く、終盤に怪我率が高くなる傾向が見られました。

 

 

怪我率は、何故に時間帯によって変動するのか

時間帯の変化とともに何が変わった?

シンプルに考えて、試合中に変化するもので、怪我に影響しそうなことと言えば、「まー疲労でしょ。」となるところだと思います。

ですが、疲労が溜まるにつれて、怪我率が上昇するのであれば、

 

前半より後半の方が怪我率は高くなるはず!しかし、実際は前半の方が疲労度は高くなった!!!

 

ということは、単純に疲労が溜まったから怪我が起こりやすくなるという構図ではなくて、

「疲労が溜まった→何かが変わった→怪我率が高くなった。」

という方程式で、物事は動いているようです。

 

では、何が原因で怪我率が変動するのでしょうか。それを、明らかにするために新たなグラフを見てみます。

下のグラフは先ほどのグラフに怪我の起因を加えたグラフです。

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ここで注目すべきは、

怪我率が高い時間帯だからといって、コンタクト(赤)の数は怪我率と同じように増えるわけではなく、

むしろ、ノンコンタクト(緑)やノーファールのコンタクト(黄)での怪我の数が、怪我率が高くなっている時間帯で高くなっていることです。

 

つまり、怪我率が高くなる原因は、ノンコンタクトやノーファール・コンタクトでの怪我が増えていることが原因というわけです!

 

わかりやすく、割合の円グラフに変えて見てみましょう。

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怪我率が高くなる、前半の15−45分後半の30−45分では、ノンコンタクトの怪我の割合が大きく上昇しています。

 

一方で、その時間帯での怪我数が増えているにも関わらず、怪我数が増えなかったファウルタックルによる怪我は相対的に割合が低くなっています。

 

 

なぜ、けがの割合が変わるのか。

では、なぜ、ノンコンタクト、ノーファール・コンタクトによる怪我数は増え、ファールタックルによる怪我数は変わらないのか。

 

まず、ノンコンタクト、ノーファール・コンタクトによる怪我は、自身の体をコントロール出来なくなったことで、引き起こされやすい傾向があるということです。

 

ノンコンタクトで怪我率が高い怪我として、前十字靭帯の怪我が代表的です。

前十字靭帯を怪我する多くの原因は、いつもは難なく出来ていた着地とか切り返しです。

着地や切り返しの時に、いつもなら膝周りの筋肉でしっかり耐えられていたのに、疲労なんかで筋肉が弱ると、耐えられず体重が膝にかかってしまい、その結果、プチっといきます。

 

捻挫なんかも、ノンコンタクトでの怪我はそういうことが原因で起こります。

 

なんですが、こういう怪我は、後半に疲労が濃くなって体にキレがなくなってからだと、

そもそも怪我するほどの勢いが出ないので、スプリントの頻度や切り返しの頻度時代が下がる時間帯では怪我率が若干低くなると考えられます。

 

なので、前半のラスト15分が怪我をする絶好に危機的時間帯になるわけです。

 

一方、ファールタックルによる怪我はなぜ時間帯に影響されず、一定なのでしょうか。

 

それは、ファールタックルによる怪我は避けようがないということだと思います。

ファールのような危険なプレーによってする怪我は、自分が疲労して、筋肉が弱まっているとか、キレがなくなってきているとか、関係ないというわけです。

 

危険なファールを、元気な間なら避けられていたけど、疲れていて避けられなかった。みたいなこともありそうですが、

この結果からすると、元気だろうが疲れてようがファールでの怪我はするときはする。ということです

 

おそらく、ちゃんと危険なタックルを受け身で受けられる選手(ネイマール中心に)は、疲れていても、ファウルタックルによる怪我を避けられるということも言えるわけです。

 

 

まとめ

  • 前半の15−45分、後半の30−45分の時間帯は怪我率増加キャンペーン中。要注意。
  • なので、試合終盤の温存については、後半30分ごろから交代することで怪我率界の第2の魔の時間帯を避けることができる。
  • もし、試合開始15分で試合が決したなら、15分を超える頃には交代させると、サッカーにおける最大の魔の時間帯も回避できる。

 

  • ファールタックルによる怪我は、疲れてなかろうと怪我するときは怪我する。だから、ちゃんと受け身を取れることは大事。
  • 疲労してきたら、ノンコンタクトの怪我に要注意。

 

以上!それでは、どぅい!

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